ミシガン高校来日記

 6月末、36年卒八田正朗先輩率いるミシガン高校レスリング・チームが来日した。
監督、コーチを含め総勢12名の一行は、国学院久我山高校レスリング部部員宅にホーム・ステイした後、6月30日(金)梅雨時の蒸し暑さの中、日吉に到着、早速学食で昼食と相成った。隣のテーブルで英語のテキストを広げていた女子塾生がいて、コーチが「ちょっと見せてくれ」と興味を示す。感想は「かなりeasy」とのことで、我が語学力を棚にあげて少々複雑な心境となる。大丈夫か、現役諸君?

 さて、ミシガン・チームは高校生とはいえ、その体格は慶應の学生を凌ぐ逞しさである。大学のアメフト部員にも「できればスカウトしたい」と言わしめる程の体格なのだ。狩猟民族と農耕民族、肉食と米食の違いなどという、昔からよく言われる彼我の違いが実感される。日本人の体格が良くなったとはいえ、そうそう簡単に遺伝子が変わるわけでもないらしい。くわえてイケ面が多く、少々羨ましい。一人はやたらと女性に声をかけ、八田さんにたしなめられる始末である。こういうところは、やはり高校生なのだ。

 彼らの宿泊は記念館横の合宿所である。荷物を運び込んでから、塾高、蝮谷を一周した。昆虫に興味を示す子もいるし、ボクシング、アメフトを見学して喜ぶ子も多かった。
午後3時、玉屋先輩指揮の下、約40分間、八田先輩の実技指導がビデオ撮影された。相手は八田先輩を最もよく理解しているというミシガン高校生。立ち技から寝技まで、一貫したわかりやすい解説は流石である。只今編集中……近々DVDに焼いて配布できる予定である。
 この日の夕食は高校生希望によりマクドナルド。OBは別途、会合を持ち、レスリング部について大いに語り合った由。

 1日(土)は塾部員とミシガン・チームで青葉台の日体大に出稽古へ。マット運動、打ち込み、スパーリングというメニューに積極的に取り組んだ高校生達であったが、やはり、かなりハードであったようだ。日体大の藤本先生よりTシャツをプレゼントされ、はしゃぐ様子は可愛いものだ。昼食の接待も受け、午後は浅草観光へ。夜は三田会の先輩方も参加して三定での会食と相成った。コーチ陣はあちらのディープ・フライとは異なるごま油を使っての天麩羅や赤だしを喜び、浅草寺や日本文化にも大いに興味を示したが、方やマクドナルドならぬ天麩羅には箸をつけずライスばかりほおばる高校生もいて、これも良き思い出となるカルチャー・ショックであっただろう。昭和35年卒の木村吉隆先輩のご好意で「助六」の江戸玩具が土産として贈呈された。(しかし、彼らにはその値段は想像できまい!いや、うちの部員にもわからないかな?)

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 ショッピング人気のナンバー・ワンはTシャツである。そういえば、昨今、欧米では漢字を記したTシャツがcoolだという。意味もわからずに着ているらしく、以前「臭」という字を堂々と着ている女性をテレビで見たこともある。とはいえ日本のTシャツその他にデザインとして書かれている英語もネイティブにとっては意味不明のひどいものが多いようだから、お互い様かもしれない。
 コーチの言によれば東京はbusy過ぎるそうで、むしろ訪問先の足利の方が緑多くデトロイトに似ていて気に入ったらしい。人間、どこにいても故郷を思い起こさせる風景には弱いものなのか。

 2日(日)は蝮谷にて本塾部員との合同練習である。八田先輩が指揮をとられ、基礎トレーニング、技の練習や打ち込みという伝統的な慶應の練習を髣髴とさせる内容であった。昼食は再度マック、その後原宿・渋谷方面に繰り出したという。コスプレ少女や今や稀少価値が出てきたガングロ少女に、彼らはどんな反応を示したのだろうか?まさか表参道をニンジャが闊歩しているとは思っていなかっただろうが、おそらくは当初持っていた日本のイメージとはかなり異なるものを見たり、聞いたりしたに違いない。機会があれば、ぜひ感想を聞いてみたいものだ。

 翌日、慌しい滞在を終えた彼らは帰国の途についた。
八田先輩は今回の滞在で「彼らに慶應の良さをアピールする」と息巻いておられたが、部員の少なさをカバーすべく、レスリング三田会としてもできる限りの接待をできたと自負している。また、慶應義塾創立150年記念事業中ということもあり、「募金運動のみならず、学生に国際交流の重要性を教育してほしい」との先輩のお言葉には大いに頷かされる。現役学生にも良い刺激になったものと信じたい。
来年度には、こちらの学生をミシガンに遠征させるという計画もあり、実現の折には、是非、塾にも喧伝したいものである。

 関係者の皆様、お疲れ様でした。

(接待された先輩方や監督の報告・感想をもとに構成いたしました。)
                                              文・OG藤田由美